会長挨拶
会長挨拶
2024年4月1日から2年間、ケイ素化学協会の会長を務めさせていただくことになりました。ケイ素(Si)はクラーク数第2位で、地殻に酸素について多く、質量にして26%も存在するユビキタスな元素です。人類は太古からこの特別な元素を生活に役立て、利用してきました。最も身近な例で言えば、ケイ素と酸素から構成されるガラス(SiO2)は紀元前4000年から使われており、現在でも我々の生活には欠くことのできない素材です。近代においては、ガラスと有機化合物のハイブリッドであるシリコーンが柔らかいガラスとして開発され、さまざまな用途において現代の人々の生活に役立てられています。また、酸素を含まない単体シリコン(Si)は、半導体の基盤や太陽電池として用いられるほか、炭素とケイ素が交互に並んだシリコンカーバイド(SiC)は、高電圧に耐える次世代パワー半導体として期待されています。
このようにケイ素はすでに人類の暮らしには欠かせないものとなっていますが、今の地球が抱える諸問題の解決にもケイ素の力を借りることが必要です。エネルギー効率が高く有害物質を副生しない化学プロセスの実現や新しい医薬品の開発、再利用可能なプラスチックの開発などに直結する多くの分野において、ケイ素を含んだ物質の効果が認められ、ケイ素化学のさらなる発展が求められています。一方で、新しいケイ素化合物群の創成や新反応の開発にかかわる純粋な基礎学術も、これまで日本が先導してきた学問分野であり、これらをシーズとして新しい物質科学を作り出していくことも極めて重要です。ケイ素化学協会は広い研究分野・産業分野を横繋ぎし、人・知恵・技術のるつぼとなって、ケイ素化学の深みと広がりのある発展に貢献していきます。単に学術的な高みを目指すだけでなく、実際に社会実装を行う企業と強く連携し、日本のケイ素関連産業のさらなる発展に資する活動としていきたいと考えています。
本年は世界のケイ素化学における最大の国際学会である国際ケイ素化学シンポジウム(ISOS)が、大下浄治本協会元会長を組織委員長として広島で開催されます。本協会はこの重要な学会の日本開催を強力にサポートするほか、ケイ素化学協会シンポジウムの開催、Web講演会の実施、各種表彰のほか、若い学生諸君の海外シンポジウム渡航支援などによって、次世代のケイ素化学の発展を支援していく所存です。会員諸氏に加え、関係ステークホルダー各位からのご理解と力強いご協力を心からお願いする次第です。
京都大学 杉野目 道紀
前会長の挨拶
歴代の会長・副会長はこちらをご覧ください。